| 美術展

キース・ヘリング展 アートをストリートへ / 森アーツセンターギャラリーを鑑賞してきました

キース・ヘリングとは何者か?

明るく、ポップなイメージで世界中から愛されているキース・ヘリング。
ヘリングは「アートはみんなのために」という信念のもと、1980年代のニューヨークで地下鉄駅構内やストリート、つまり日常にアートを拡散させることで、混沌とする社会への強いメッセージを発信し、人類の未来と希望を子どもたちに託しました。ヘリングが駆け抜けた31年間の生涯のうち創作活動期間は10年程ですが、残された作品に込められたメッセージはいまなお響き続けています。
本展は6メートルに及ぶ大型作品を含む約150点の作品を通してヘリングのアートを体感いただく貴重な機会です。社会に潜む暴力や不平等、HIV・エイズに対する偏見と支援不足に対して最後まで闘い続けたヘリングのアートは、時空を超えて現代社会に生きる人々の心を揺さぶることでしょう。(公式サイトより引用)

みなさん、こんにちは。今日は2024年1月19日(金曜日)、東京は晴れ、新年最初の美術鑑賞は、現在、森アーツセンターギャラリーで開催されているキース・ヘリング展です。キース・ヘリングといえばユニクロのTシャツで知った方も多いのではないでしょうか?独特の力強いラインに大胆な色使いで一度みたら忘れない、魅力的な画風のアーティストです。

今回の展示は日本初公開の作品も含めて約150点の作品が展示されています。ポップアートの王様「アンディ・ウォホール」とのコラボレーション作品も展示されていますので、ウォホールファンにもオススメの展覧会です。

キース・ヘリングは活躍していた当時のアメリカでの社会問題(ゲイへの偏見、HIV・エイズに対する偏見、死)に対して闘いながら、数々の作品を残したアーティストです。アーティストとして活躍したのは実質10年程度。キース・ヘリングのオリジナリティ溢れる作風を鑑賞できる美術展です。今回、最後のエリア以外は撮影可能でした。写真を紹介していきたいと思います。

注意点

今回の展覧会は残念ながら図録の販売がなかったことです。これから展覧会行く方はご注意ください。大部分撮影可能なので、いつも図録を購入している方は、撮影しながら鑑賞しないと、1年後とかに展覧会を思い出すのには自分の写真しか資料がありません。

音声ガイドはオススメ!

音声ガイドは有料で、キース・ヘリングのことはある程度知っていたので迷ったのですが、650円、払って聞きながら鑑賞しました。音声ガイドは今回もオススメですが、正直いうと、もう少し内容を増やして欲しいのが正直なところです。チケット代含めると2,850円。安くはないので、解説のポイントを増やして頂けると、もう少し理解できたかもしれません。でも、今回図録の販売もないので音声ガイドはオススメです。

グラフィティから始まった

1980年代にニューヨークの地下鉄の使用されていない広告板に貼られた黒い紙にグラフィティを描き始めました。もちろん地下鉄の駅の広告エリアに対して無許可で行っている犯罪行為なので見つからないように短時間で描く必要がありました。

「グラフィティアート」は、スプレーやペンなどを用いて、高架下の壁、電車の車両等、公共の場に描かれた文字や絵のことを指し、ヒップホップの文化として1970年代に、アメリカのニューヨークの一部地域で流行しはじめました。日本でも結構みかけますが、日本でも犯罪行為ですし、アートと言えるようなクオリティの作品は見たことがありません。日本ではやめて欲しい行為です。東京では散歩すれば結構な頻度で描かれていますが、お世辞にも良いとは思えないものばかりです。

ただ、アメリカのグラフティが面白いのは作品が大衆に受け入れられると、犯罪行為から作品となり訴えられることが少なくなるケースがあり、何とも不思議な文化です。今の時代でいうと、バンクシーも同様ですね。(芸術として認識される場合に「グラフィティ・アート」と呼ばれるようになっています。)

黒い紙にチョーク

通常の公共の壁や電車に直接エアゾールスプレーで描くとなかなか消えないのですが、キース・ヘリングは黒い紙にチョークで描いており、なんとも優しい?描き方です。子供達が道路にチョークで落書きしているのを、東京でもたまに見ますが、そのような感覚でしょうか?

サブウェイ・ドローイング

キース・ヘリングは地下鉄の駅に描いていたので「サブウェイ・ドローイング」という作品名となっています。今回の展示でも複数の作品が展示されています。展示方法もこだわっていて、壁にタイルも貼っておりニューヨークの地下鉄の雰囲気を演出していました。


ツェン・クォン・チーが撮影したキース・ヘリングの写真。(うまく説明できませんが、個人的に好きな作品でした。)

曾廣智(ツェン・クォン・チー)

ツェン・クォン・チーは香港生まれの写真家で、カナダとパリで教育を受け、1980年代にニューヨークに移住。ツェン・クォン・チーは時代の多くの影響力のあるアーティストと親交を深めましたが、特にキース・ヘリングには、多くの作品や記録写真で協力しています。


Dog 1986年
キース・ヘリングがアイコン的に、何度も描いた「犬」のキャラクター。

アンディ・マウス 1986年

アンディ・ウォホールとのコラボレーション作品が4点展示されています。個人的にウォホールファンとしては観れて嬉しかった作品の1つです。

アンディ・ウォホールは当時アメリカでは芸能人のように有名で人気もありました。ミッキー・マウス、アンディ・ウォホール、ドルマーク(お金)を合体させ「成功の象徴として」描いています。社会での成功自体や資本主義そのものを批評するのではなく、その周りの人間達も含めて描いて、「お金」や「人気(知名度)」が重要となっていく資本主義社会での人間の行動や価値観を批評しているようにも見える作品です。

社会へメッセージを発信し続けたキース・ヘリング

キース・ヘリングは大衆にダイレクトにメッセージを伝えるため、多くの部数を制作することができる「ポスター」という媒体を選び作品を制作しメッセージを社会に発信し続けました。題材は反アパルトヘイト、エイズ予防、性的マイノリティの人々のカミングアウトを祝福する記念日「ナショナル・カミングアウト・デー」などの社会的なものから、企業とのコラボレーション広告といった商業的なものまで、100点以上となります。


沈黙は死 / 1989年
社会問題に対する政府の無関心を告発するために制作された作品


南アフリカ解放 / 1985年
南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)に対しての黒人の白人に対する闘争を描いた作品


無知は恐怖、沈黙は死 / 1989年
キース・へリングがエイズと診断された後に描いた作品。エイズ拡大に無関心な政府に警鐘を鳴らすため、エイズ認知啓発を促すのが目的とし、「見ざる・聞かざる・言わざる」の三猿をモチーフにした。三猿は日本でいうと日光東照宮を思い出しますが、古代エジプトの時代から存在しているので世界共通の表現となっています。


アートを使ったエイズとの戦い / 1988年


ヒロシマ 平和がいいに決まっている!! / 1988年
1988年に広島で行われたチャリティコンサートのために制作されたポスター。収益は広島の被爆者や医療施設の建設費にあてられています。


ペルシダ / 1986年
アフリカ美術の影響を受けた、パブロ・ピカソの作品を思い出させる作品。キース・ヘリングのアーティストとしての目標の1つに、MoMA(ニューヨーク近代美術館)に作品を収蔵してもらうことがありました。西洋美術史を学び、作品に落とし込んでいいき、アート作品を残そうと挑戦しつづけた姿勢も感じられます。

生存中は残念ながらその夢は叶いませんでしたが(その後、MoMAは収蔵しています)、今は世界的に有名なアーティストとなり、令和の時代の日本でも展覧会が開催されています。

地下鉄の広告の看板に描き始めてアーティストとしてのキャリアがスタートしていますが、最終的には美術館に収蔵されるまで芸術家として成長していった過程もわかる展覧会です。

キース・ヘリングが影響を受けたアーティスト

・パブロ・ピカソ
・ジャン・デュビュッフェ
・ピエール・アレシンスキー
・フランク・ステラ

キース・ヘリング (1958-1990)

アメリカ北東部ペンシルベニア州に生まれる。
1980年代初頭にニューヨークの地下鉄駅構内で、使用されていない広告板を使ったサブウェイ・ドローイングと呼ばれるプロジェクトで脚光を浴びる。

アンディ・ウォーホルやジャン=ミシェル・バスキアと共にカルチャーシーンを牽引し、国際的に高い評価を受ける。日本を含む世界中での壁画制作やワークショップの開催、HIV・エイズ予防啓発運動や児童福祉活動を積極的に展開したことでも知られる。

90年にエイズによる合併症により31歳で死去。

キース・ヘリング展 アートをストリートへ KEITH HARING Art to the Streets

東京
会期: 2023年12月9日(土)~2024年2月25日(日)
https://kh2023-25.exhibit.jp/
東京の後は、神戸、福岡、名古屋、静岡、水戸と各地巡回予定です。貴重な作品を鑑賞できる貴重な機会ですね。

時代背景を知るには

キース・ヘリングが活躍した時代の背景を知るには、NETFLIXでアンディ・ウォーホル・ダイアリーズというドキュメンタリーフィルムが公開されています。こちらがオススメです。ウォホールと一緒に作品も残したキース・ヘリングなので、こちらのドキュメンタリーを観てから美術館にいったほうが作品を鑑賞しやすいです。

アンディ・ウォーホル・ダイアリーズ

1968年に銃撃された後、日々の出来事や心情を日記の形で記録し始めたアンディ・ウォーホル。その日記をひも解き、希代の芸術家の秘められた素顔に迫る。
公開年:2022年
製作総指揮:ライアン・マーフィー
URL:https://www.netflix.com/jp/title/81026142

キースヘリングの生涯を描いたドキュメンタリー『キース・ヘリング〜ストリート・アート・ボーイ〜』


世界的アーティスト「キース・ヘリング」のドキュメンタリー映画『キース・ヘリング〜ストリート・アート・ボーイ〜』のオンラインで配信されています。この記事を書きながら調べていたら発見しました! 今日はもう遅い時間なので、週末どこかで鑑賞してみたいと思います。

独特の力強いラインに大胆な色使い。数々の作品にキースが込めた熱い思いとは? MadeGood Filmsが手がけるドキュメンタリー専門プラットフォーム『MadeGood Films見放題プラン』にて鑑賞できます。(今日現在、7日間無料、その後は月額¥750円)
https://madegood.com/keith-haring-street-art-boy/

まとめ

写真で紹介した展示作品は展示されている作品の中からごく一部です。ぜひ気になる方は美術展に足を運んでみてください。後、写真撮り忘れましたが、グッズ販売が充実していました。ファンは楽しめるはずです。

次回はおそらく今月末、2024年1月27日、東京都美術館で開催する「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」を鑑賞する予定です。そちらのブログもお楽しみに。それではインフルエンザも流行っており、コロナも終息していないので、くれぐれも体調にお気をつけください。

参考

Wikipedia:キース・ヘリング
中村キース・ヘリング美術館
The Keith Haring Foundation
Tseng Kwong Chi

公開日:
最終更新日: