皆さんこんにちは、今日は2024年11月5日(火曜日)。昨日月曜日は文化の日で祝日で、さらに会期最終日でしたが、東京からはるばる千葉市美術館へ行き、開催されていました「Nerhol 水平線を捲る」を鑑賞してきました。
東京の自宅からは往復移動時間、約5時間と決して近く無いですが、まだ雑誌やWebでしか観たことのなかった待望のNerholさんの作品です。以前から興味あったのでようやく鑑賞できる期待とともに電車に揺られておりました。当日は晴れていたので、JR京葉線から太平洋の水平線を見れたのも良かったです。
残念ながら会期は終了しておりますので、ご注意ください。会期は2024年9月6日[金] – 11月4日[月・祝]でした。
千葉市内は千葉都市モノレールが走っており、 千葉みなと駅から葭川公園駅までモノレールで移動です。ぶら下がり式のモノレールには初めて乗りましたが、結構高いところを走っているので高所恐怖症には、冷や汗をかいた乗り物です。
千葉市美術館の素晴らしさ
初めて足を運んだ美術館でしたが、建物自体が戦前の建物で、元々、旧川崎銀行 千葉支店で建物自体も建築の歴史を感じることのできる素晴らしい建築でした、現在は美術館として利用されています。また、全体の雰囲気も素晴らしく今回美術館内の図書館にも作品が展示されていたので、図書館も少しだけ拝見しましたが、千葉市近郊の方が羨ましくなる程、書籍も充実していました。東京からは気軽には行けない距離ですが、また、積極的に足を運びたいと思っております。
所蔵作品も千葉市美術館のウェブサイトで閲覧できますが、なかなかの充実ぶりで千葉も直島のようにアートが充実したエリアを県自体が千葉市郊外に運営されたら観光客が増えそうです。今回の展覧会では、Nerholさんの作品と、他の作家の千葉市美術館の所蔵作品も一緒に展示されており、李禹煥、トーマス・ルフ、ベッヒャー夫妻(タイポロジー・フォトグラフィ)、他、有名な作家の作品も楽しめる素晴らしい展覧会でした。
写真撮影は前半のエリアは許可されておりませんでしたが、許可されていたエリアも結構広くて気がついたら500枚以上撮影してしまいました。その一部を紹介していきます。
展示エリアの壁の設置がラフな素材が良かった
いわゆる美術館やギャラリーの白い壁だけでなく、あえてラフな印象を与える板を使用したりしていて、こちらも好みでした。2024年3月頃に鑑賞したバリー・マッギーの美術展でも感じた、木板そのものの素材感や素材感や板の上の文字やペイントに時間や他人の手作業を感じる、なんとも言えない雰囲気も良かったです。
あえて、フレームから作品を外して、床に直接置く作品の展示方法も新鮮でした。
8階の展示の次は、階段を降りて7階の展示スペースへ移動です。
小清水 漸(こしみ ずすすむ)さんの作品も一緒に展示されていました。(千葉市美術館所蔵)
1960年代後半から70年代にかけて台頭した「もの派」 グループの中心メンバーとしても知られている。「もの派」とは、作家の干渉を最大限に排除し、主に石、砂、木、綿、ガラスや鉄といったありのままの物質をそのままの形で配置した彫刻やインスタレーションで主に構成された反モダニズム的な作品を発表していた作家達のゆるやかな集まりのことを指す。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
彫刻家 植木 茂さんの仏頭という作品。
木による抽象彫刻の草分け的存在であり、その代表的作家として活躍した植木茂。木地と木目を生かし、穏やかなのみ跡を残し、有機的で柔らかいフォルムを持つ独自の作風を築いた。(出典:東京文化財研究所)
高松次郎
作品はインスタレーションから絵画、彫刻、壁画、写真、映画にまで様々なスタイルに至り、多くの作品が抽象的かつ、反芸術的な色合いが濃いもので、実体の無い影のみを描いた作品「影」シリーズが脚光を浴び、石や木などの自然物に僅かに手を加えただけの作品、遠近法を完全に逆にした作品など、あえて「思考させる」「思考する」ことにより、作品と世界との間に新しい関係を作りだすことに成功し、1960年代以降の日本におけるコンセプチュアル・アートに大きな影響を与えた。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
キャンバスに大きく描かれた赤ん坊の 影。1964年頃より開始された〈影〉の シリーズの一作である。制作の 背景には、60年代前半の赤瀬川原平、 中西夏之らとのコレクティブ的な 活動である「ハイレッド ・ センター」 での都市へ介入する行為の匿名性と、 高松個人が追究した不在性の問題が 深く関わっている。対象が描かれず、 多重化した虚像は、マスメディアの 発達により「像(イメージ)」が 増大する当時の社会状況を象徴して いたとも捉えられる。(千葉市美術館による作品リストより)
タイポロジー・フォトグラフィ
ドイツの写真家、ベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻の作品が有名。撮影対象のフォルムやパースペクティヴ、ストーリー性を強調しない、フラットなイメージを撮影。そして図鑑のように、それらの写真を同一モチーフごとに集めて、グリッド上に並べて展示し、時代や歴史を伝えるような構成にした撮影スタイル。
ミニマル・アートやコンセプチュアル・アートの文脈において高く評価されることとなり、90年には、ヴェネツィア・ビエンナーレの彫刻部門で賞を受けている。
ベッヒャーの真正面にNerholさんの作品が展示、ベッヒャーの作品を見つめているようでもあり、写真表現の時代の流れを感じる展示です。
高松次郎さんの写真作品「写真の写真」も展示されていました。
C’n scene news vol.107 千葉市美術館による解説
トーマス・ルフの「室内」も展示されていました。
トーマス・ルフの「室内」のそばに展示されていたNerholの作品
参考:現代写真を代表するトーマス・ルフを知ってる? 来日インタビュー(cinra.net)
ダン・グラハム|Dan Graham 円形の入口のある三角柱
ダニエル・グラハム(1942年3月31日 – 2022年2月19日)は、アメリカのビジュアルアーティスト。彼の初期の雑誌ベースのアートはコンセプチュアルアートよりも古いが、しばしばコンセプチュアルアートと関連付けられている。彼の後期の作品は、写真、ビデオ、パフォーマンスアート、ガラスと鏡のインスタレーションアート構造、および閉回路テレビを取り入れることで、文化現象に焦点を当てていた。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
李禹煥の「With Winds」シリーズの作品。超大型作品です。
河原温のTodayシリーズ(通称:日付絵画)も展示されていました。
こうやって見ていると、コンセプチュアルアートやコンセプトを感じやすい作品がNerholの作品と一緒に展示されています。
白髪一雄「陽華公主」も展示されていました。
キャンバスの上に油絵具を置き、天井から吊り下げたロープに捕まって足を筆がわりにして描いているため、大胆な画風が楽しめる作品となっています。(参考:現代アートの歩き方)
河口龍夫
1960年代から作品の発表を始める。関係をテーマに制作活動を実施。芸術表現を単にひとつのスタイルにすることや、視覚にのみ依存する芸術のあるように抗する芸術表現を模索し、作品を精力的に発表する。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
柳原義達 鴉 1978
なんで、カラスの彫刻作品が展示されているのだろうと不思議に思いましたが、千葉市美術館の解説によると、彫刻を触覚空間の芸術であると認識する柳原は、日本大学芸術学部で長く教鞭を取り、Nerholの飯田さんにとっても戦後彫刻史上の重要な人物だそうです。
1978年に制作された鴉のブロンズ作品は、鳩や鴉をモチーフとした柳原の代表的なシリーズ〈道標〉の一点である。神戸市の動物愛護協会からモニュメント制作の委嘱を受けたことを契機とし、鴉の形態の美しさに魅せられた柳原は、以後に鴉を自宅でも飼育し、デッサンを通じてその躍動的な造形を探究し続けた。
秋岡美帆|Miho Akioka そよぎ 4-1|Sway 4-1
本作はフィルムカメラで撮影した楠を、 NECO(ネコ)プリントという技法で 麻紙に印刷したものである。NECO プリントとはかつて屋外広告などに 用いられた技術で、ポジフィルムを 電気信号に置き換え、エアブラシに よって4色のインクを支持体に 吹き付ける。秋岡は木々や光、 影などを被写体に、同様の技法で 作品をつくり続けた。自然と社会の影響関係を問うNerhol作品をふまえると、美しい風景を商業的な技術で顕在化させる作家の制作方法が、また異なる見え方をする。(千葉市美術館による展覧会リストより)
千葉市美術館コレクション選「特集 ポートレート」
ライブラリーでの展示
Silent booksーRyuya Iida Art Work in CCMA Art Library
Nerhol
Nerhol(ネルホル)は、田中義久(1980–)と飯田竜太(1981–)により2007年に結成されたアーティストデュオです。二人の対話を契機に、人や植物など「移動」にまつわる様々な事象のリサーチを通じ、他者に開かれてきた長年におよぶ表現活動の歩みを、美術館で初となる大規模な個展によって紹介します。
Nerholの活動は、グラフィックデザインを基軸とした田中と、彫刻家である飯田の協働性を特徴としています。人物の連続写真を重ねて彫る初期のポートレートから、今日では帰化植物*や珪化木*、アーカイブ映像まで対象を広げ、独自の世界観を深化し続けてきました。写真と彫刻、自然と人間社会、見えるものと見えないものといった複数の境界/間を、日々の会話のように行き来して紡がれてきた作品は、私たちを多様な解釈へと誘います。
「Nerhol 水平線を捲(めく)る」展では、これまでの活動における重要作や未発表作に加え、千葉市の歴史や土地と関わりの深い蓮をテーマとした最新作、さらには二人が選ぶ美術館のコレクションを展示し、この場所だけでしか体験できない空間を創出します。人間の知覚や現代社会における一義的な認識では捉えることができない、Nerholによる時間と空間の多層的な探究は、千葉の地で豊かな展開を見せることでしょう。
*帰化植物(きかしょくぶつ) 自生地から日本国内に持ち込まれ野生化した外来種の植物
*珪化木(けいかぼく) 地中で長い時間をかけて珪酸が浸透し石化した植物
図録・IMA
帰りに図録とIMA vol.42を購入しましたが、いわゆる普通の図録ではなく展示風景自体も写真に収められています。美術館に行けなかった方はオススメです。
Nerhol 水平線を捲る 単行本 – 2024/11/7
千葉市美術館 (編集), Nerhol (著), 森啓輔 (著), 庄子真汀 (著)
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IMA(イマ)Vol.42 2024年10月30日発売号
Amazon.co.jpで購入できます
特集「ネルホル、潜在する記憶」
ネルホルの現在地点
千葉市美術館で個展「水平線を捲る」を開催中のアーティストデュオ ネルホル。
彼らは写真を重ねて積み上げ、それを彫ることで、
本来一枚の写真からは溢れ落ちてしまう時間や記憶、
さらには背景にある歴史や社会的背景を浮き上がらせていく。
ネルホルが描く波立つ水面のように歪むイメージは、
複雑で単一的ではないこの世界のメタファーのようだ。
肖像写真、帰化植物、韓国や別府で展開されたフィールドワークから
パブリックドメインの写真素材まで、被写体となるテーマや素材を拡張させながら、
紙との深い関わりを軸に我々に写真の新たな可能性を提示するネルホル。
彼らはどこから来て、これからどこへ向かうのか。
17年間の活動の痕跡を振り返りながら、ネルホルの現在と未来を探る。
その他企画
日本写真史をめぐる対談 レスリー A・マーティン×アイヴァン・ヴァルタニアン
ボリビア先住民のガールズスケーターたち ルイーザ・ドル
東京都写真美術館で開催中 アレック・ソス個展「部屋について」 青山南
スポーツ写真における5/3000 の矜持 金野孝次郎
生誕100年記念『安部公房写真集』 近藤一弥
注目の写真家 矢島陽介
公式サイト
千葉市美術館サイト:https://www.ccma-net.jp/exhibitions/special/24-9-6-11-4/
参考
「小清水漸:垂線」豊津徳07【HozuTalk】「垂線」
時間を描く: 河原温と同時代の象徴の領域について|https://note.com/dannknoll/n/ndd852d038b2c
SNOW Contemporary 河口龍夫「時間の位相」:http://snowcontemporary.com/exhibition/201609.html
ハイレッド・センター(美術手帖):https://bijutsutecho.com/artwiki/35
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