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映画『ターナー、光に愛を求めて』を鑑賞しました(※ネタバレ少し)

今日は2023年8月6日(日曜日)、快晴。東京は猛暑日が続いていますが今朝は少し涼しい朝です。東京では魅力的な美術展が多数開催されており、連日のように美術館に足を運び、色々気になったことをコツコツと調べては学んでいく日が続いています。

先日、東京の国立新美術館で開催されている『テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ』で作品を見て興味を持ったジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー。有名なので何となく「名前と有名作品」は知っていたのですが、もっと詳しく知りたいと思い、いろいろ調べていたら彼の半生が2014年に映画化されていました。

ティモシー・スポール
『ターナー、光に愛を求めて』のティモシー・スポール

映画について

監督・脚本はマイク・リー、主演は「ティモシー・スポール」(映画ハリー・ポッター シリーズにも出演しているので知っている方も多いのでは?)、カンヌ国際映画祭最優秀男優賞、芸術貢献賞受賞も受賞しており、興味深かったので今日は2023年8月4日(金曜日)早速観てみました。

(※ネタバレ少し)
映画公開時にはPG-12指定(小学生以下のお子様が視聴する際、保護者の助言・指導が必要。)の作品ですが、変わり者のターナーの後半生を描いた映画なので、大人でも観ていると時々しんどくなる映画です。個人的にはR18+か、20歳以降まで制限かけてもいい気がするくらいなので、観る際はご注意ください。

決してエンタメでもなく、感動作でもなく、伝記としての映画で、観ている途中は何度も観るのやめようかと思いました。

※映画としては人間を丁寧に描いた、素晴らしい映画だと思います。美術に興味がありターナーの事を知りたい大人の方はオススメの映画です。19世紀のイギリスの雰囲気(街の雰囲気、建築、衣装、ライフスタイル等)も世界史を学ぶに際にも参考になる映画です。

個人的に印象に残ったシーンは、劇中でターナーが写真を撮影してもらうシーン。19世紀の画家が、写真というものに出会い、実際撮影されるシーンは美術史においては象徴的なシーンで、それが実際、映画で再現されているのは貴重な映像なのではないでしょうか?

歴史的に写真の登場は、画家にとって、写実的な絵画から、絵画しかできない新しい描写を模索する時代の幕開けを意味します。
また、「アカデミーの展覧会」のシーンも再現されており、今まで美術書で「言葉や知識」として知っていた「アカデミーの展覧会」が、どのような雰囲気なのか?よく分かるシーンなので、こちらも観て良かったポイントです。

19世紀の時代背景

英国最高のロマン主義の風景画家と評されるほど、ターナーは主に風景画を多く残して評価されています、彼が活躍した19世紀は
・多くの画家が室内から戸外での制作に関心を向けるようになった時代。
・フランスでは金属製のチューブが発明され、油絵具の保存期間が伸び、持ち運びが容易になった。
・1839年 フランスで、ニエプスとダゲールが写真術を発明・公開(写真が登場したのち、画家の役割が変わる。写真に負けない、新しい絵を描こうと考えはじめて、大きく変わって行った時代。)
と様々な変化が起きた時代です。

この映画を観る前に知っておいた方がいいこと

ターナーの半生が淡々と描写されていく映画なので、この映画を観る前に知っておいた方がいいことがあります。説明的なナレーションは無い映画なので、以下は知識として持っていた方が映画が観やすくなります。

・ターナーは、写実的な風景画で若い頃から評価されつづけ、人生の後半から作風を変化させ「大気と光の効果を追求する」作品を描き、印象派の作家等に影響を与えた先駆者的な存在。
・ターナーが29歳の時、精神を病んだ母親が亡くなる。(1804年に入院先の病院で死去)
・ターナーは加齢とともに奇行癖が強くなっていった。(変わった性格の持ち主でした)
・ターナーは父親を除いて親友がおらず、父親が30年間、ターナーのアシスタントとしてアトリエで働いていた。
・44歳の時、イタリア旅行が大きな転機になる。写実的な風景から、大気と光の効果を追求することに主眼が置かれるようになった。
・彼にとって父親は信頼できる「特別な存在」でターナーが54歳の時、父の死は、彼に喪失感をもたらした。

現在配信サービス(YoutubeGoogle PlayApple TV)で鑑賞できます。

経歴

1775年4月23日、ロンドン、コヴェント・ガーデンの理髪店を営む一家に生まれる。
1783年、8歳のときに、5歳の妹メアリー・アンを亡くす。この頃から母親が精神を病み、母親との関係が生涯の女性関係に大きく影響したとみられる。
1789年、14歳でイギリス美術界最大の権威を誇るロイヤル・アカデミーへ入学。風景画の制作に打ち込む。とくに海辺や山岳地帯の光景に傾倒し「旅の画家」として各地を飛び回る。
1799年、24歳でロイヤル・アカデミーの準会員に選出。同時期、サラ・ダンビーと交際を開始。のちに2女をもうけるが、生活をともにすることはなかった。
1802年、史上最年少の27歳でロイヤル・アカデミーの正会員に選出。
1804年、29歳の時、母親が精神病院で亡くなる。
1807年、ロイヤル・アカデミーの遠近法教授に就任。
1811年から講義を行う。
1815年、ワーテルローの戦いでフランスがイギリス軍に敗れ、英仏の第2次百年戦争は終わる。(以後英仏同士は戦争していない。)
1819年、44歳の時のイタリア旅行。これが彼の作品において大きな転機となった。写実的な風景画から大気と光の効果を追求することに主眼が置かれるようになった。
1829年、54歳の時、最大の理解者であった父ウィリアムが他界。同じころ、船乗りの妻ソフィア・ブースの家に間借りし、まもなく未亡人となったソフィアと交際を開始するが、その関係は頑なに隠された。
1839年、フランスで、ニエプスとダゲールが「写真術」を発明・公開
1845年、70歳でロイヤル・アカデミーの院長代理を務めたが、晩年、伝統的な表現方法を大きく逸脱した独自の画風は批評の的となることも多く、自身の作品を手元に置くことを好んだ。
1851年12月19日、チェルシーのソフィアの家で静かに息を引き取る。享年76歳。

遺言で、専用のギャラリーを設けることを条件に自分の全作品を国家に寄贈するとともに、自らの作品2点を尊敬するクロード・ロランの作品と並べて掛けることを望んだ。現在、テート・ブリテン美術館の一角にターナー専用の展示室が増設され、ナショナル・ギャラリーには《カルタゴを建設するディド》と《霧のなかを昇る太陽》が、クロードの作品と並べて展示されている。

ターナーは生涯を通じて5回から7回の画風の転換があったと言われています。
第1期は、主題が中心に描かれた風景画の時代、
第2期は、風景の中心に広い空間が開けてくる時代、
第3期は、開けた空間に光が現れた時代、
第4期は、その光の中に何らかの姿が描かれた時代、
第5期は、風景全体が光で満たされた画風

謎のヴェールに包まれた英国史上最高の画家その素顔と創作の秘密が、今明かされる

19世紀、イギリス。27歳の若さでロイヤル・アカデミー正会員の名声を得た、天才画家ターナーは、年老いても尚、名画創作に没頭する日々を送っていた。だがそんなある日、彼の一番の理解者にして、助手としても支えていた最愛の父が、病に倒れ帰らぬ人となってしまう。悲しみから逃れる為に訪れた娼館で、娼婦をスケッチしながら突然号泣するターナー。その後は絵を描いても、家政婦を抱いても、彼の心は満たされない。そんな日々を変えるべく、以前訪れたマーゲイトの宿に再び宿泊したターナーは、そこで未亡人となった宿夫人・ソフィアと再会し、彼女の明るく優しい人柄に心慰められていく。やがて彼女と親密な仲となったターナーは名画創作の意欲を取り戻していくが、彼の並はずれた才能は時代の先を行き過ぎ、評価が真っ二つに分かれるようになっていく…。

第67回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞、芸術貢献賞受賞
第87回アカデミー賞撮影賞、衣装デザイン賞、作曲賞、美術賞4部門ノミネート

ティモシー・スポール

1957年2月27日、イギリス、ロンドン出身。王立演劇学校等で学んだ後、70年代終盤からロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに約2年間在籍、数々の作品に出演。テレビ映画「Home Sweet Home」(82年)で、マイク・リー監督作品に初参加。以降、映画出演は本作で5作目。『ライフ・イズ・スウィート』(91年)、英国アカデミー(BAFTA)賞主演男優賞ノミネート『秘密と嘘』(96年)、ロンドン映画批評家協会賞英国助演男優賞ノミネート『トプシー・ターヴィー』(99年)、ヨーロッパ映画賞最優秀男優賞ノミネート『人生は、時々晴れ』(02年)でタッグを組み、数々の賞にノミネートされる。99年には大英帝国勲章を受章。

URL|http://www.cetera.co.jp/turner/

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『湖に沈む夕陽』ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 1840年、テート・ギャラリー所蔵

『湖に沈む夕陽』は、現在国立新美術館で開催されている『テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ』で現在観ることができる作品です。映画を観てターナーの作品を見たくなった方は貴重な機会なのでぜひ、国立新美術館で鑑賞してみてください。
会期|2023年7月12日~ 2023年10月2日
URL|https://www.nact.jp/exhibition_special/2023/tate/

まとめ

いつも海外の映画で理解できないことが多いシーンは「ユーモア・皮肉」のシーン。今回も何回か意味わからないシーンがありました。これは日本人だからなのか?僕が何か知識が不足しているから理解できないのか?何が問題なのか?それが、わからないくらいのシーンもありました。←これはいつものことなので、仕方ない。

また、映画全体、息苦しくなるくらいのストーリーなので、気軽に勧められる映画ではありません。ターナーファンなら観てよかったと思える映画かもしれません。個人的にはターナーの後半の人生を知れたいい機会でした。それでは次回は東京都美術館で開催されているマティス展について感想を書く予定です。

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