映画『画家モリゾ、マネの描いた美女 名画に隠された秘密』を鑑賞しました。ターナに続き「印象派」前後の時代の映画がありました。2015年に製作された映画、主演は「マリーヌ・デルテルム」という女優さん。なんと、画家や彫刻家としても活躍している方です。監督はカロリーヌ・シャンプティエ。日本での人気のあった「ポネット」という映画では撮影を担当している方です。
個人的に美術史が「楽しくない」問題
古代、中世、近代と世界史とともに西洋美術史の中で、時代順に作品を追っていくと一つ問題がでてきました。
「なんか楽しくない。世界史も同時に勉強しているので話題は戦争ばかり。。。暗い気持ちになっていく。」
↓
「つまらない。。。」
です。そうです、興味があり自発的に勉強しているのに、なんか楽しくないのです。。。最初は「世界史」の「戦争」の歴史が原因かな?と考え、我慢していました。それでも、もう少し楽しいはずだと考えるようになります。
「子供の頃の勉強→遊ぶの我慢して勉強する→嫌だ、つまらない」
から、
「大人の勉強→遊ぶの飽きて、新しい刺激が欲しくて勉強している→OK、面白い」
になるはずです。今まで興味あることは大人になった今でも色々勉強してきましたが、基本楽しかったです。
でも今回は何故か違います。そこで気がついたのは、
原因は「好みの画風ではない作品ばかり!」ということに気がつきました!勉強に集中しすぎて自分の感情を忘れてました。
ずーっと宗教絵画・建築ばっかりで、すぐに飽きました。
僕はクリスチャンではない日本人なので、
なかなか、遠い世界の話に感じれます。
↑
この事実を受け入れるしかありませんが、そうはいっても勉強はやめたくありません。
そこで個人的な好き嫌いの視線で、歴史順に西洋美術史をみると、
好きになれそうな作品がでてきたのは、1656年のディエゴ・ベラスケスの「ラス・メニーナス(女官たち)」。可愛いお姫様が主役の絵画です。初めて、おっ!なんか「楽しそうだ」と思いました。多分、ディズニーの世界観に近いものを個人的に感じたのではないでしょうか?
『ラス・メニーナス』ディエゴ・ベラスケス 1656年 油彩
その後の人気作家のフェルメール・ゴッホも嫌いじゃ無いけど、個人的にはツボではない。マネも、歴史的には重要な作家なのかもしれないけど、とうてい好きになれない。で印象派の時代の到来です。そこで知ったモリゾの絵は明るい気持ちになれる作品で、家族を中心に描いているので、どこか共感しやすいのかもしれません。この時代から西洋美術史を学ぶのが楽しくなってきました。
一瞬で惹かれた明るい作品群
女性らしく、優しげで、繊細な印象を残してくれるモリゾの作品は明るく輝いて感じることができ、モリゾは個人的に好きな画家の1人となりました。この時代の画家の中では一番好きな画家です。(日本で大回顧展開催してほしいものです。)
でもここで考えました。
「それでも変だと。長い歴史なのに、こんなに好きな絵が少ないのはおかしい?」
と、そこで、印象派の時代を学びモリゾに出会い、よくよく考えたら、圧倒的に「女性の画家」が少ないことです。ほとんど男性です。西洋美術史は男性中心の社会でつくられた歴史なのでした!全く気がつきませんでした。
最初は、宗教絵画や権力者の肖像画の時代だから、面白く無いのかな?と考えましたが、
それもあるのかもしれませんが、「女性」がいなかったのです。
令和・平成の時代は違います。クリエイターと呼ばれる職業の方(アーティスト、イラストレーター、デザイナー、その他)は、女性・男性ともに活躍し、その作品をあたりまえのように我々は楽しんでいます。その時代に生きている人間の感覚からみると、「面白く無い」と感じるのは当たり前の感覚なのかもしれません。
モリゾのおかげで、色々な気づきがありました。そんな彼女をテーマとした映画作品があるなら観ない手はありません。邦題は日本人むけに『画家モリゾ、マネの描いた美女 名画に隠された秘密』となっていますが、原題は『Berthe Morisot』とマネではなく「ベルト・モリゾ」が主役の映画です。
ベルト・モリゾ
マネに絵画を学びながら、彼のモデルを多く務めた。
モリゾはマネの弟ウジェーヌ・マネと結婚。1878年に一人娘ジュリーを出産。夫婦仲も良く夫や娘を題材にした作品を多く描いた。
ベルト・モリゾ(1841年1月14日 – 1895年3月2日)は、エドゥアール・マネの絵画のモデルとしても知られる、19世紀印象派の画家。夫はエドゥアールの弟ウジェーヌ・マネ。一人娘はジュリー・マネ。モリゾの画風は自然の緑を基調としたものが多く、穏やかで母子の微笑ましい情景などが特徴的である。男性中心の19世紀における女性画家ということもあって、フェミニズム研究でのアプローチが多い。
「ベルト・モリゾ」を知るには師匠の「エドゥアール・マネ」を知る必要があります。
エドゥアール・マネ
エドゥアール・マネ(1832年1月23日 – 1883年4月30日)は、19世紀のフランスの画家。近代化するパリの情景や人物を、伝統的な絵画の約束事にとらわれずに描き出し、絵画の革新の担い手となった。特に1860年代に発表した代表作『草上の昼食』と『オランピア』は、絵画界にスキャンダルを巻き起こした。女神(ヴィーナス)ではなく、人間の女性(娼婦)を裸体で描き問題となった。当時はキリスト教の影響で、女神はOKでも、人間の女性の裸体は欲望を煽るものとして描いてはいけないものでした。
印象派の画家にも影響を与えたことから、印象派の指導者あるいは先駆者として位置付けられる。
『画家モリゾ、マネの描いた美女 名画に隠された秘密』
19世紀半ばにフランスで起こった芸術運動「印象派」の誕生に大きく関わった女性画家ベルト・モリゾが巨匠エドゥアール・マネとの出会いを経て、ひとりの女性として成長していく過程を描いたフランス映画。パリ16 区のサロンに出品していたベルト・モリゾは、ルーブル美術館で姉と摸写をしている際に、すでに美術界では名をなしていたマネと出会う。マネにモデルを依頼されたモリゾは、彼のアトリエに通うことになる。女性は家庭に入るのが当たり前だった時代、画家を目指すモリゾは数々の苦悩を乗り越えていく。監督はゴダール作品などの常連の撮影監督であるカロリーヌ・シャンプティエ。モリゾに「ココ・シャネル」「恋人たちのアパルトマン」のマリーヌ・デルテリム。マネに「焼け石に水」セザール賞有望若手男優賞にノミネートされたマリック・ジディ。
2012年製作/105分/G/フランス
原題:Berthe Morisot
配給:ユナイテッド・シネマ
AmazonではDVDが発売されています。
Prime Videoでレンタルできます。
Apple TVでもレンタルできます。
感想(※ネタバレあり)
ここからは多少のネタバレがあるので、これから映画観る方は、映画を見終わってから以下を読んでください。
劇中で丁寧に描かれている、マネとベルト・モリゾの恋愛関係は諸説あるので、正しくは不明です。映画の描写が全てではありません。純粋にモデルをやり、絵を学んだだけという説もあります。映画なので多少はドラマチックに演出したのではないでしょうか?(※映画を見終わった後、劇場パンフレットを購入し、そのパンフレットにもそのようなことが書かれていました。)
映画にするにあたって、少ない史実から想像したシーンもあります。当時は手紙のやり取りが当たり前のように行われており、その手紙が残っており、その中から膨らました話もあるでしょう。
実際、マネの弟のウジェーヌとの結婚を機にマネはモリゾをモデルとして起用しなくなりました。また、マネは草上の昼食でもみられるよう、少し太った、ふくよかな女性が好みだったという説もあります。モリゾはどちらかというと細いスタイルの女性なので恋愛対象ではなかったという説も。。。どっちかは想像におまかせが一番なのかもしれません。
エドゥアール・マネ『草上の昼食』 1862年–1863年 油彩、カンヴァス
このモリゾとマネについては山田五郎さんのYoutube「山田五郎 オトナの教養講座」の公式チャンネルでも語られています。
まとめ
マネとの恋愛より、モリゾが女性として悩み「恋愛」 「家庭」 「仕事」というバランスをとるのが難しい普遍的な問題を描いている映画作品として見てもいいかもしれません。女性の方が感情移入できる映画かもしれません。モリゾに興味ある方は観て損はない映画作品ですよ。
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