みなさん、こんにちは。今日は2023年11月12日(日曜日)、東京はぐっと冷え込み一気に冬のような寒さがやってきました。一昨日までの暖かさが嘘のようです。風邪ひかないように気をつけないといけない気温となりました。みさなんも体調管理ご注意ください。
さて、先日、行ってきた国立西洋美術館で開催されている「パパリ ポンピドゥーセンター キュビスム展 ― 美の革命」、昨日の記事では「プリミティヴィスム・原始主義」について紹介してみました。今日は「キュビスムの始まりと、キュビスムは3つの時代に分けることができる」ということを紹介していきます。
パブロ・ピカソ「女性の胸像」
1907年 6-7月 油彩/カンヴァス
パブロ・ピカソ「女性の胸像」
ピカソの代表作のうちの1つ「アヴィニョンの娘たち」(1907年)の制作中に描かれた、習作とされている作品です。ピカソがパリに出て最初に付き合った恋人、フェルナンド・オリヴィエ(Fernande Olivier)を分解して描いたものだとされています。仮面のような縦長の顔や長めの首を見ると、アフリカ芸術からの影響もみれます。顔、首、髪、鼻、目、腕、体、胸等、各パーツを分割し、幾何学的な形状で描いているのはセザンヌの影響とされています。写実的な絵画では見られない、輪郭線がしっかり残っているのも特徴的です。
※ 今回のキュビスム展では「アヴィニョンの娘たち」の展示はありません。画像はこちらから。「アヴィニョンの娘たち」は現在、MoMA(ニューヨーク近代美術館)所蔵となっています。
ピカソの「女性の胸像」の作品は、「プリミティヴィスム・原始主義」が現れたキュビスムの歴史を理解するにはわかりやすい作品です。色使いも独特で不思議な印象です。
セザンヌやキュビスムの特徴の一つ「多視点」で描かれているというよりは、視点は1つに定まっているようにもみえるので、こういった作品を経てキュビスムが確立していった流れが見える作品ですね。
※厳密にいうと、キュビスムという呼称の「CUBE / 立方体」という描き方はされてないので、キュビスムの始まりの頃の絵として分類できるみたいです。
西洋美術の遠近法、写実画という基本を無視したこの新しい画風の「アヴィニョンの娘たち」に衝撃を受けたジョルジュ・ブラックは自らも「大きな裸婦」を描きました。その作品も展示されています。
ジョルジュ・ブラック「大きな裸婦」
1907年冬-1908年 6月 油彩・カンヴァス
ブラックのこの作品は身体も顔も大きくデフォルメされています。こうやってピカソと、ピカソに影響を受けたブラックは2人で新しい画法、キュビスムを探求していくこととなり、その後、世界中にキュビスムの大流行がおきることとなります。
キュビスムは3つの時代に分けることができます。
こうやって2人の芸術家によって始まるキュビスムですが、大きく分けると3つの時期に分けることができます。
1.「初期のキュビスム」
2.「分析的キュビスム」
3.「総合的キュビスム」
と西洋美術史では名前がついています。
初期のキュビスム
ポール・セザンヌの影響が色濃く残っていながらもキュビスムが始まった頃。
分析的キュビスム
ピカソとブラックによって探求され確立されていった、1908年頃から1912年頃に探求された表現。描こうとする対象物を小さく分断し、形を再構築しながら対象を描いています。結果、対象物や背景の境界が消え、1つにあわさったような絵になったり、形状の面白さや新しさを追求することに集中していたので、色数は制限されたのも特徴的です。幾何学的な図柄も多数用いられて描かれているので、抽象的な要素も感じられる画法となっていきました。後の抽象画と呼ばれる表現にもつながっていきます。
総合的キュビスム
この表現は1912年以降に見られるようになり、色数が制限されていた「分析的キュビスム」から、色数を増やしたり、絵の具に質感をもたせようとしたり、新聞や印刷物を貼って物質感を用いたり、文字を絵の中に描いたり、さらに新しい画法が探求されています。キュビスムが流行しはじめ、その結果、色彩豊かな絵がピカソとブラックだけでなく、様々な画家によって生み出されています。
まとめ
パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命は、キュビスムの時代の流れが理解しやすいように展示されています。本やネットの情報だけでは理解しずらい歴史の流れを時間軸で体感できるのも特徴的な展覧会となっています。明日は「初期のキュビスム、分析的キュビスム」について紹介していきたいと思います。
パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展 ― 美の革命
東京都:国立西洋美術館 2023年10月3日(火)~ 2024年1月28日(日)
京都府:京都市京セラ美術館 2024年3月20日(水)〜 7月7日(日)
公式サイト|https://cubisme.exhn.jp/
最終更新日: